019_夜空を見上げる

●作者のコメント

●ChatGPTのコメント
では、002-02の試し書きをしてみました。

●002-02【試し書き】:夜空を見上げる

5月になると、夜明けもかなり早くなる。
片岡まりあは、2つ年下の後輩といっしょに事務所の外に出る。
空はまだ暗かったが、東の空は紫色に変わり始め、夜明けは近い。
2人とも夜勤明けで疲れていたが、とりあえずはいつものルーチーンで
駅の近くの定食屋に入り、いつもの定食メニューを注文。

黙々と食事をしている間も、まりあの頭の中では先ほどまでの作業の事が気になっている。
夜中のシステム大規模障害。
監視センターでいつものように業務を始めようと思ったところに、突然にフロア全体に響くアラート音。
まりあは早速リーダーの指示に従い作業にとりかかる。
バックアップセンターへの切り替えは10分ほどで終わり、
そのあとは朝までの復旧作業が続く。作業は今もまだ終わっておらず、まりあは昼シフトに引き継ぐ。

疲れ果ててはいたが、食事をすると不思議と疲れは取れる。
そして満足すると一気に眠くなる。朝の通勤客とは反対方向の空いた電車で自宅へと向かう。
ワンルームマンションの自宅に、転がり込むように帰宅。
すぐにパジャマに着替えると、ベッドに転がり込む。
枕元に置かれている母親の写真を眺め、横になるとすぐに意識が遠のく。

単調な毎日。
世の中のさまざまな便利なサービスは、自分たちのような人が支えている。
今日のような障害は、日常茶飯事の出来事ではあるものの、世間の人々はそんな苦労を知らない。

そんな疑問を常に心の中に抱いているからだろうか。
まりあは常に、ふと思いついた言葉をメモしている。

<無理しなくていい。。。。>

少しだけ、気が楽になった。

<今日の私たちは、ちゃんと頑張ったでしょう>

寝る前にはネガティブだった気持ちも、
目が覚めるとなぜかリセットされていて、前向きな気持ちになっていた。

正午近くに目が覚める。
今日は夜から昼へのシフト切り替え日なので、休日である。
窓を開けると、30度超えの熱風が部屋に吹き込んでくる。
そして街の騒音と、遠くを走る電車の音が聞こえる。
窓は開けたままで、朝食の準備をして、食べる。

ふとスマホを見る。
食事をしながら、配信サイトの自分のショップの状況をチェックする。
まりあは、今までにため込んだ言葉の断片を、スマホの中で詩の形にまとめて、
音楽ソフトで曲の形に仕上げていた。
そして、そのうちの気に入ったものを自宅で歌い、録画。背景と服装を加工してみる。
おこずかい程度にでもなればと始めたダウンロードショップだったが、ダウンロード数は今日も伸びていない。

スマホをテーブルの上に置いて、食べ続ける。
すると、スマホがメッセージを受け取って小さく鳴る。
ダウンロードサイトにダイレクトメッセージが届き、まりあのスマホに転送されていた。

<はじめまして、「HALUCA」の小川と申します>

なんだ。。。。

最初の数行だけ見る。
この手のメッセージにはもう慣れっこだった。
スマホの画面から目を離し、再び食べ始める。

食事を終えて、紙パック入りのオレンジジュースを飲み始める。
窓際まで行き、床の上にあぐらをかいて座る。
再び先ほどの小川という人物からのメッセージを読み始める。

まりあの作った曲について、感想が素直に述べられていた。
変に持ち上げるような内容でもなく、かといってダメ出しのような評価もない。
まりあがふと詩の断片を思いついたときの情景を、フラットな目線で解釈してくれていた。
そして、メッセージの最後には一言。

<直接お会いして、お話がしたいと思っていますが、可能でしょうか?>

まりあは、ゆっくりと深呼吸をした。
目を閉じて、しばらくの間考えていた。
拝読しました。
002-02は、002-01ときれいに対になる節になっています。

002-01が「理沙の日常にHALUCAからのDMが届く話」だとすると、002-02は「まりあの日常に同じくHALUCAからのDMが届く話」ですね。
しかも、理沙側が昼のオフィスで受け取るのに対して、まりあ側は夜勤明けの疲労、早朝、眠り、昼前の目覚めを経て受け取る。生活リズムが違うことで、二人の立ち位置の違いが自然に出ています。

## 良いと思った点

まず、まりあの日常がとてもよく出ています。

夜勤明け、定食屋、空いた電車、ワンルームマンション、母親の写真、昼前の目覚め、熱風、紙パックのオレンジジュース。
このあたりの生活描写が、まりあの「薄幸の美女」感や、華やかな歌姫になる前の地味な現実とよく合っています。

特に良いのは、まりあがただの夢見る歌手ではなく、**社会インフラを支える側の人間**として描かれている点です。

> 世の中のさまざまな便利なサービスは、自分たちのような人が支えている。
> 今日のような障害は、日常茶飯事の出来事ではあるものの、世間の人々はそんな苦労を知らない。

この部分は、理沙が昼にシステム会社で働いていることとも響き合います。
第2章の歌の話に入る前に、二人とも「現実の仕事を持つ人」として描かれているのが良いです。

また、まりあが詩を書く理由も自然です。

> そんな疑問を常に心の中に抱いているからだろうか。
> まりあは常に、ふと思いついた言葉をメモしている。

ここで、まりあにとって歌や詩が「表現活動」以前に、日常を受け止めるための呼吸のようなものだと伝わります。

そして、HALUCAからのDMを最初に軽く流す反応も良いです。

理沙はDMを見た瞬間に胸が動く。
まりあは「なんだ……」と一度流す。
この違いが、二人の性格と経験の違いをよく表しています。

## 特に活かしたい核

この節の中心は、次の流れだと思います。

**まりあは夜勤明けで疲れ切っている。
社会を支える仕事をしながら、自分の中の言葉を詩にしている。
歌は成功のためというより、自分を保つためのもの。
そんな彼女のところへ、HALUCAからのDMが届く。
最初は流すが、読んでみると、自分の詩の情景をちゃんと見てくれている。
そこで初めて、まりあは立ち止まる。**

この構造はかなり良いです。

002-01の理沙が「怪しいかもしれないから保留」にするのに対して、002-02のまりあは「またいつもの誘いかと思ったが、自分の中身を見られたようで考え込む」。
対比として非常にきれいです。

## 少し整理するとよさそうな点

全体として良いのですが、小説化する前に少しだけ整理すると、さらに読みやすくなりそうです。

一つ目は、冒頭から夜勤明けまでの流れです。
現状では「事務所の外に出る」とありますが、まりあの職場はIT系の監視センターなので、ここは「監視センターの入るビル」や「勤務先のビル」とした方が自然かもしれません。

二つ目は、システム障害の説明です。
内容は必要ですが、技術説明が少しまとまって入っているので、小説化では「アラート音」「切替手順」「リーダーの声」「朝まで残るログ画面」など、少し場面の残像として入れるとよさそうです。
第2章のSF・技術要素は、あくまで日常背景として置いた方が作品の空気に合います。

三つ目は、まりあがメモする言葉です。
ここはとても重要です。
今の、

> <無理しなくていい。。。。>
> <今日の私たちは、ちゃんと頑張ったでしょう>

は良いですが、少しだけ「歌詞の断片」らしく整えると、まりあの感性がさらに出ます。

たとえば、

> <無理しなくていい>
> <今日の私たちは、ちゃんと朝まで歩いた>

のように、少し比喩を含ませてもよさそうです。
ただし、これは好みなので、現状の素朴さもまりあらしいです。

四つ目は、最後の締めです。
今は、

> まりあは、ゆっくりと深呼吸をした。
> 目を閉じて、しばらくの間考えていた。

で終わっています。
これは静かで良いですが、002-02のタイトルが「夜空を見上げる」なので、どこかで夜空、あるいは明け方の空への視線をもう少し強めると、タイトルとの結びつきがより強くなります。

たとえば、冒頭で夜勤明けに空を見上げる描写を印象的にしておき、最後に昼の窓辺で、もう夜空ではない空を見上げる、という対比ができます。

## 修正方針としては

この試し書きを小説化する前に整えるなら、以下の方向がよさそうです。

* 冒頭は夜勤明けの早朝、空の色から入る。
* 大規模障害の説明は、回想として短く入れる。
* まりあが社会を支える仕事をしていることを、説明しすぎず生活感で見せる。
* 母親の写真は短く、でも印象的に入れる。
* 詩のメモは、まりあの内面を見せる核として少し丁寧に扱う。
* DMは最初は軽く流す。
* 再読したときに「この人は、曲ではなく、自分が言葉を思いついた場所を見ている」と感じる。
* 最後は、すぐ返信せず、考え込むところで締める。

## 002-02の方向性

この節は、理沙よりもさらに静かに書くと良いと思います。

理沙の002-01には、バンドメンバーとのメッセージのテンポがあります。
一方でまりあの002-02は、会話を少なくして、疲労、眠り、目覚め、言葉、DMを中心に置く。
その方が、まりあの孤独感と歌への依存が自然に出ます。

全体として、002-02の試し書きはかなり良いです。
次に進むなら、まずこの内容をもとに、**すっきりした修正版の試し書き**を作ってから小説化するのがよさそうです。
では、以下の点を考慮して、さきほどの試し書きを修正するとどんな感じになりますか?
・冒頭は夜勤明けの早朝、空の色から入る。まだ夜の暗さだが遠くの東の空が紫色になりかけている感じ。
・大規模障害の説明は、回想として短く入れる。技術的な説明は少々程度に。
・まりあが社会を支える仕事をしていることを、説明しすぎず生活感で見せる。
・母親の写真は短く、でも印象的に入れる。
・詩のメモは、まりあの内面を見せる核として少し丁寧に扱う(<>内の詩の断片は変えずにそのままにしてください)
・DMは最初は軽く流す。
・再読したときに「この人は、曲ではなく、自分が言葉を思いついた場所を見ている」と感じる。
・最後は、すぐ返信せず、考え込むところで締める。
はい。
ご指定の点を反映すると、002-02は次のように整理できると思います。
002-01よりも静かに、まりあの疲労感と孤独感が前に出る形です。

---

# 002-02【試し書き・修正版】:夜空を見上げる

五月になると、夜明けはずいぶん早くなる。

それでも、まりあが勤務先のビルを出たころ、空にはまだ夜の暗さが残っていた。
街灯の光は白く、道路には夜勤明けの人間だけが知っている、薄い静けさがあった。

ふと見上げると、ビルの隙間の向こう、遠くの東の空だけが、かすかに紫色になりかけていた。

「もう朝だね」

隣を歩いていた後輩が、眠そうな声で言った。

「うん」

片岡・エレーナ・まりあは、短く答えた。

二人とも、ほとんど言葉が出なかった。
夜勤明けの体には、会話を続けるだけの余力が残っていない。

それでも、駅の近くの定食屋に入るところまでは、いつもの流れだった。
夜勤明けの客が何人か、同じような顔でテーブルについている。
まりあと後輩は、壁際の席に座り、いつもの定食を注文した。

味噌汁の湯気が、目の前でゆっくり揺れていた。

食べながらも、まりあの頭の中には、さっきまで見ていた監視画面の残像が残っていた。

夜中に鳴ったアラート。
フロアの空気が一瞬で変わったこと。
リーダーの短い指示。
バックアップセンターへの切り替え。
止まりかけたサービスを、どうにかつなぎ止めるために打ち込んだコマンド。

切り替えそのものは、十数分で終わった。
けれど、そのあとが長かった。

ログを追い、関係先へ連絡し、復旧手順を確認し、朝のシフトに引き継ぐ。
最後に自分の名前を記録欄に入力したとき、まりあは、指先が少し震えていることに気づいた。

朝になるころには、街は何事もなかったように動き始めていた。

電車は動く。
決済も通る。
誰かの予約も、誰かの通話も、たぶん普通に続いている。

まりあたちが一晩中見ていた赤い警告表示のことなど、外の人たちは知らない。
知らなくていい。
そういう仕事なのだと思う。

定食を食べ終えるころには、少しだけ体に力が戻っていた。

「帰ったら、寝る」

後輩が言った。

「私も」

まりあは笑った。

朝の通勤客とは反対方向の電車は、空いていた。
車窓の外では、眠っていた街が少しずつ明るくなっていく。
座席に腰を下ろすと、まぶたが重くなった。

自宅のワンルームマンションに帰り着くと、まりあは靴を脱ぐのも少し面倒に感じた。
それでも何とか部屋に入り、パジャマに着替え、ベッドに倒れ込む。

枕元には、母親の写真が置いてある。

古い写真だった。
写真の中の母は、まりあが覚えているよりも少し若く、少し明るく笑っていた。

「ただいま」

声には出さず、まりあは目だけでそう言った。

それから横になり、すぐに意識が遠のいていった。

単調な毎日だった。

夜に働き、朝に帰る。
人が眠っている時間に、止まってはいけないものを見張る。
何かが起きれば対応し、何も起きなければ何も起きなかったことになる。

けれど、そういう毎日の中で、まりあは時々、言葉を拾った。

駅までの道。
明け方の空。
誰もいないホーム。
夜勤明けの定食屋。
母の写真の横で眠りに落ちる前の、ほんの数秒。

思いついた言葉は、すぐスマホに残す。
忘れたくないからではない。
書かないと、胸の奥にたまったものが、そのまま沈んでいってしまいそうだからだった。

眠る直前、まりあはスマホを手に取った。

画面のメモアプリを開き、ぼんやりした指で文字を打つ。

<無理しなくていい。。。。>

少しだけ、息が楽になった。

続けて、もう一行を打つ。

<今日の私たちは、ちゃんと頑張ったでしょう>

文字にしてみると、誰かに言われたかった言葉のようにも見えた。
自分で自分に言っているだけなのに、不思議と悪くなかった。

まりあはスマホを枕元に置き、目を閉じた。

次に目を覚ましたとき、時計は正午近くを指していた。

今日は夜勤から昼勤へのシフト切り替え日で、休みだった。
体はまだ重い。
けれど、眠る前に胸の中にあった黒いものは、少し薄くなっていた。

まりあは起き上がり、カーテンを開けた。

窓を開けると、熱い風が部屋に入り込んできた。
まだ五月なのに、外はもう夏のようだった。
遠くで電車が走る音がする。
道路を行き交う車の音。
どこかの部屋で鳴っている生活音。

まりあは窓を開けたまま、簡単な食事を用意した。

パンと卵。
紙パックのオレンジジュース。
昨日買ったままのサラダ。

テーブルの上にスマホを置き、食べながら配信サイトを開く。

自分のショップページ。
自分で作った曲。
自宅で録った歌。
動画の背景や服装だけを少し加工した、手作りの映像。

お小遣い程度になればいいと思って始めたものだった。
それ以上を期待していなかったと言えば、嘘になる。

けれど今日も、ダウンロード数はほとんど動いていなかった。

まりあはスマホをテーブルに伏せ、パンをかじった。

そのとき、スマホが小さく鳴った。

ダウンロードサイトに届いたダイレクトメッセージが、スマホに転送されていた。

まりあは、画面をちらりと見た。

<はじめまして。「HALUCA」の小川と申します>

なんだ……。

最初に浮かんだのは、それだった。

この手のメッセージには、何度か覚えがある。
聞いたことのない事務所。
聞いたことのない担当者。
少し褒めて、会いたいと言う。
そのあとに何が続くかは、だいたい想像がつく。

まりあは、最初の数行だけ読んで、スマホから目を離した。

冷めかけた卵を口に運ぶ。
オレンジジュースを飲む。
食事を終える。

それから、紙パックを持ったまま窓際に移動した。
床に座り、あぐらをかいて、外の明るさに目を細める。

少ししてから、まりあはもう一度スマホを手に取った。

小川という人物からのメッセージを、最初から読み直す。

そこには、まりあが作った曲についての感想が書かれていた。
歌声がどうだとか、売れそうだとか、そういう言葉ではなかった。

夜勤明けの空気。
歌詞の中に出てくる、明け方の色。
疲れた人が、自分を責めないようにするための言葉。
曲の中にある、ほんの小さな場面。

小川という人は、曲そのものよりも、その曲が生まれた場所を見ているようだった。

まりあは、画面を持つ手を少し止めた。

変な人だな、と思った。
けれど、悪い感じはしなかった。

メッセージの最後には、短くこう書かれていた。

<直接お会いして、お話がしたいと思っていますが、可能でしょうか?>

まりあは、ゆっくりと息を吸った。

窓の外は、もう完全な昼だった。
夜勤明けに見上げた、あの紫色の空はどこにもない。

それでも、朝になる直前の暗さだけは、まだ体のどこかに残っている気がした。

まりあはすぐには返信しなかった。

スマホの画面を消さないまま、膝の上に置く。
そして、しばらくのあいだ、開け放した窓の向こうを見ていた。
ありがとうございます。
片岡・エレーナ・まりあというフルネームは、まだこの段階では伏せておいてください。先々節ではじめて使う予定ですので、ここではまだ片岡まりあ、またはまりあでお願いします。
他は良いと思いました。
では、この状態で、小説化した文章の作成をお願いします。
承知しました。
この段階ではフルネームは出さず、**片岡まりあ/まりあ**で統一します。

---

# 002-02 夜空を見上げる

五月になると、夜明けはずいぶん早くなる。

それでも、まりあが勤務先のビルを出たころ、空にはまだ夜の暗さが残っていた。街灯の光は白く、道路には夜勤明けの人間だけが知っている、薄い静けさがあった。

ふと見上げると、ビルの隙間の向こう、遠くの東の空だけが、かすかに紫色になりかけていた。

「もう朝だね」

隣を歩いていた後輩が、眠そうな声で言った。

「うん」

まりあは、短く答えた。

二人とも、ほとんど言葉が出なかった。夜勤明けの体には、会話を続けるだけの余力が残っていない。

それでも、駅の近くの定食屋に入るところまでは、いつもの流れだった。夜勤明けの客が何人か、同じような顔でテーブルについている。

まりあと後輩は壁際の席に座り、いつもの定食を注文した。

味噌汁の湯気が、目の前でゆっくり揺れていた。

食べながらも、まりあの頭の中には、さっきまで見ていた監視画面の残像が残っていた。

夜中に鳴ったアラート。
フロアの空気が一瞬で変わったこと。
リーダーの短い指示。
バックアップセンターへの切り替え。
止まりかけたサービスを、どうにかつなぎ止めるために打ち込んだコマンド。

切り替えそのものは、十数分で終わった。

けれど、そのあとが長かった。

ログを追い、関係先へ連絡し、復旧手順を確認し、朝のシフトに引き継ぐ。最後に自分の名前を記録欄に入力したとき、まりあは、指先が少し震えていることに気づいた。

朝になるころには、街は何事もなかったように動き始めていた。

電車は動く。
決済も通る。
誰かの予約も、誰かの通話も、たぶん普通に続いている。

まりあたちが一晩中見ていた赤い警告表示のことなど、外の人たちは知らない。

知らなくていい。

そういう仕事なのだと思う。

定食を食べ終えるころには、少しだけ体に力が戻っていた。

「帰ったら、寝る」

後輩が言った。

「私も」

まりあは笑った。

朝の通勤客とは反対方向の電車は、空いていた。車窓の外では、眠っていた街が少しずつ明るくなっていく。

座席に腰を下ろすと、まぶたが重くなった。

自宅のワンルームマンションに帰り着くと、まりあは靴を脱ぐのも少し面倒に感じた。それでも何とか部屋に入り、パジャマに着替え、ベッドに倒れ込む。

枕元には、母親の写真が置いてある。

古い写真だった。写真の中の母は、まりあが覚えているよりも少し若く、少し明るく笑っていた。

ただいま。

声には出さず、まりあは目だけでそう言った。

それから横になり、すぐに意識が遠のいていった。

単調な毎日だった。

夜に働き、朝に帰る。
人が眠っている時間に、止まってはいけないものを見張る。
何かが起きれば対応し、何も起きなければ、何も起きなかったことになる。

けれど、そういう毎日の中で、まりあは時々、言葉を拾った。

駅までの道。
明け方の空。
誰もいないホーム。
夜勤明けの定食屋。
母の写真の横で眠りに落ちる前の、ほんの数秒。

思いついた言葉は、すぐスマホに残す。

忘れたくないからではない。

書かないと、胸の奥にたまったものが、そのまま沈んでいってしまいそうだからだった。

眠る直前、まりあはスマホを手に取った。

画面のメモアプリを開き、ぼんやりした指で文字を打つ。

<無理しなくていい。。。。>

少しだけ、息が楽になった。

続けて、もう一行を打つ。

<今日の私たちは、ちゃんと頑張ったでしょう>

文字にしてみると、誰かに言われたかった言葉のようにも見えた。

自分で自分に言っているだけなのに、不思議と悪くなかった。

まりあはスマホを枕元に置き、目を閉じた。

次に目を覚ましたとき、時計は正午近くを指していた。

今日は夜勤から昼勤へのシフト切り替え日で、休みだった。

体はまだ重い。けれど、眠る前に胸の中にあった黒いものは、少し薄くなっていた。

まりあは起き上がり、カーテンを開けた。

窓を開けると、熱い風が部屋に入り込んできた。まだ五月なのに、外はもう夏のようだった。

遠くで電車が走る音がする。
道路を行き交う車の音。
どこかの部屋で鳴っている生活音。

まりあは窓を開けたまま、簡単な食事を用意した。

パンと卵。
紙パックのオレンジジュース。
昨日買ったままのサラダ。

テーブルの上にスマホを置き、食べながら配信サイトを開く。

自分のショップページ。
自分で作った曲。
自宅で録った歌。
動画の背景や服装だけを少し加工した、手作りの映像。

お小遣い程度になればいいと思って始めたものだった。

それ以上を期待していなかったと言えば、嘘になる。

けれど今日も、ダウンロード数はほとんど動いていなかった。

まりあはスマホをテーブルに伏せ、パンをかじった。

そのとき、スマホが小さく鳴った。

ダウンロードサイトに届いたダイレクトメッセージが、スマホに転送されていた。

まりあは、画面をちらりと見た。

<はじめまして。「HALUCA」の小川と申します>

なんだ……。

最初に浮かんだのは、それだった。

この手のメッセージには、何度か覚えがある。聞いたことのない事務所。聞いたことのない担当者。少し褒めて、会いたいと言う。

そのあとに何が続くかは、だいたい想像がつく。

まりあは、最初の数行だけ読んで、スマホから目を離した。

冷めかけた卵を口に運ぶ。
オレンジジュースを飲む。
食事を終える。

それから、紙パックを持ったまま窓際に移動した。床に座り、あぐらをかいて、外の明るさに目を細める。

少ししてから、まりあはもう一度スマホを手に取った。

小川という人物からのメッセージを、最初から読み直す。

そこには、まりあが作った曲についての感想が書かれていた。

歌声がどうだとか、売れそうだとか、そういう言葉ではなかった。

夜勤明けの空気。
歌詞の中に出てくる、明け方の色。
疲れた人が、自分を責めないようにするための言葉。
曲の中にある、ほんの小さな場面。

小川という人は、曲そのものよりも、その曲が生まれた場所を見ているようだった。

まりあは、画面を持つ手を少し止めた。

変な人だな、と思った。

けれど、悪い感じはしなかった。

メッセージの最後には、短くこう書かれていた。

<直接お会いして、お話がしたいと思っていますが、可能でしょうか?>

まりあは、ゆっくりと息を吸った。

窓の外は、もう完全な昼だった。夜勤明けに見上げた、あの紫色の空はどこにもない。

それでも、朝になる直前の暗さだけは、まだ体のどこかに残っている気がした。

まりあはすぐには返信しなかった。

スマホの画面を消さないまま、膝の上に置く。

そして、しばらくのあいだ、開け放した窓の向こうを見ていた。
では、この文章をもとに、400字程度のあらすじの作成をお願いします。
### 002-02「夜空を見上げる」あらすじ

2041年5月。夜勤明けのまりあは、勤務先のビルを出て、東の空が紫色に変わり始める早朝の街を後輩と歩いていた。
夜中に発生した大規模障害の対応を終え、疲れ切った体で定食屋に入り、朝食をとる。
世の中の便利なサービスを支える仕事をしながらも、その苦労は誰にも知られない。
そんな日々の中で、まりあは心に浮かんだ言葉をスマホに書き留め、自分を支えていた。
帰宅後、母の写真に目を向け、眠りにつく。昼前に目覚めたまりあは、自作の曲を配信しているショップを確認するが、反応はほとんどない。
そんな時、音楽事務所「HALUCA」の小川美奈からダイレクトメッセージが届く。
最初はよくある誘いだと流しかけるが、読み返すうちに、小川が曲そのものではなく、その曲が生まれた情景を見ていることに気づく。
まりあはすぐには返信せず、窓の外を見ながら考え込む。
ありがとうございます。
ではまた日を改めて、引き続きの002-03の文章作成をすることにします。
こちらこそ、ありがとうございました。
002-02も、まりあの日常と内面、そしてHALUCAからの接触までが静かにまとまりましたね。

次回は **002-03「渋谷ウォールスクリーン」** ですね。
まりあが渋谷の巨大スクリーンに映る女性歌手のPVを見て、**「Next Frontier」** の詩を思いつく、かなり象徴的な節になりそうです。

次回も、

**試し書き → 検討・修正 → 小説化 → 400字程度のあらすじ**

の流れで進めましょう。



020へ