3.「エンデヴァー」会議室風景、理沙、船長、メリッサ、レイラ

「エンデヴァー」の会議室は、円形の空間だった。中央には十二人が一度に集まれる丸いテーブルが据えられており、その周囲に体を固定するための
小さな椅子が等間隔に配置されている。椅子には簡単な固定具が備え付けられており、無重力状態でも姿勢を保てるようになっていた。
壁は無機質なパネル構造で、必要な工具や機器類を収納するための扉付き戸棚がいくつも並んでいる。
一方の壁面には、幅四メートルほどの大型ディスプレイが設置されていた。

テーブルには四人が座っている。男性一人と女性三人。船内時間九時から始まる、定例の作業進捗会議だった。空調の音以外に、室内を満たす雑音はない。

動力および推進システムを担当する大嶋理沙が、淡々と作業進捗を報告している。声の調子は一定で、言葉の選び方も簡潔だった。
昨日までに実施したテスト内容、確認された数値、次の工程。その一つひとつが、過不足なく並べられていく。他の三人は口を挟まず、ただ聞いている。

理沙の報告が七割ほど進んだところで、彼女の正面に座る副船長のレイラ・マクニールが、小さく手を挙げた。理沙はそれに気づき、言葉を止める。

「どうぞ」

促されると、レイラは短くうなずき、理沙の報告内容を簡潔に復唱した。そのうえで、淡々と自身の考えを述べ始める。

「昨日実施した推進システム七〇パーセント出力テストですが、プラズマ状態に関する詳細な説明が不足しています。特に不安定域に入る直前の挙動についてです」

一拍置いて、レイラは続ける。

「次に、今回予定しているシミュレーションテストについて、リスク事項をどこまで認識していますか。想定外の条件が重なった場合の対応が、現時点では明確ではありません」

さらに、視線をディスプレイに向けながら言葉を重ねる。

「そのシミュレーション結果が、実際の推進システム運用を保証するものと言えるのか、その点についても確認が必要です」

最後に、少し間を置いてから結論を述べた。

「そして最大の問題として、全体の進捗が当初予定より三週間遅れています」

同じテーブルに座るフレドリック・ルーニー船長と、副パイロットのメリッサ・ランプリングは、二人のやり取りを黙って見ている。
船長は時折、壁面ディスプレイに目を向けた。そこには十二人の乗組員それぞれの健康状態や現在位置などのステータスが一覧表示されている。
メリッサは表情を変えず、視線をテーブルの中央に落としたままだった。

レイラの指摘は続く。船長は腕を組み、わずかに落ち着かない様子を見せるが、口は挟まない。
指摘の内容はいずれも妥当で、会議を早く終わらせたいという気配だけが、わずかに室内に残っていた。



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