彩名が理沙の部屋に来てから一年が過ぎる。
二人の生活は大きく変わらず、必要な会話だけを交わしながら、静かに同居の日々を続けていた。
ある日、彩名は新しい部屋が決まったことを理沙に告げる。
理沙は理由を聞かず、ただ受け止める。
引っ越し前夜、ほとんど空になった部屋で、二人は簡単な酒とつまみを並べ、ささやかな祝いのような時間を過ごす。
店や客、引っ越し先の話をするうち、彩名は久しぶりにオーナーに会ったことを口にする。
理沙が阿久津と恵梨香のことを尋ねると、彩名は短く「消されたよ」とだけ答える。
説明も補足もなく、その言葉だけが部屋に残る。
翌朝、彩名は荷物を運び出し、玄関で「お世話になりました」と告げて出ていく。
扉が閉まったあと、理沙はその場に立ち尽くす。
彩名の笑顔は吹っ切れたようでいて、どこか軽く、重さを失っているようにも見えた。
|