営業を終えた理沙は、そのまま新宿のバー「白河」へ向かう。
扉を開けると、そこには変わらない音、匂い、温度があり、理沙はカウンターの端に座る。
湯浅はいつもの距離にいて、必要以上に話しかけることもなく、理沙はグラスを口に運びながら少しずつ緊張をほどいていく。
店では何も求められず、何も整えなくていい。その静けさの中で、理沙の思考はまとまらないまま止まっていた。
やがて湯浅が隣に来て、店で歌っているときの理沙にあった「生きてる感じ」はどこへ行ったのかと、静かに問いかける。
それは評価でも批判でもなく、ただの疑問のように置かれた言葉だった。
理沙は湯浅を見つめ返し、ステージで声を出していた自分と、今の自分がつながらない違和感を覚える。
何も答えないまま時間が過ぎ、湯浅がわずかに笑う。
理沙はその表情を見つめ、小さく深く息を吐く。
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