001_23_西日が差している(1)【あらすじ】

夏の終わり、理沙は自宅のベランダで缶ビールを飲みながら、沈んでいく西日を眺めていた。
半月ほど前、白河で湯浅から、もう一度バンドを始めること、そしてオリジナル曲も作りたいことを聞かされていた。
その流れで、理沙は詞を書いてみないかと頼まれ、軽い気持ちで引き受ける。
だが実際に紙とペンを前にすると、言葉はまったく形にならなかった。
恋愛の曲でいいと言われても、自分の中に強く残る経験や輪郭が見つからず、書いては消すことを繰り返す。
どこかで聞いたような言葉にしてしまえば軽くなり、意味がなくなる。
理沙は夕暮れの空を見つめながら、何を出せばいいのか分からないまま時間を過ごす。
やがて空が暗くなり始めた頃、ふと心の奥に、言葉になる前の断片が浮かぶ。
それは形にはなっていないが、消えずに残っている何かだった。



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