「西日が差している」をめぐる理沙と湯浅のやり取りは、その後も続いていく。
湯浅からは、自宅で同じフレーズを繰り返し歌う動画や、スタジオでメンバーと音を合わせる映像が送られてくる。
ギターやドラムが加わり、曲は少しずつ輪郭を太くしていく。
理沙はそれらを音を出さずに眺めることが多く、最初に渡した紙の上の言葉とは少し違うものへ変化していく曲を、離れた場所から見守っていた。
自分の手を離れたあとも、芯だけは残っていると感じ、もう手を入れる必要はないと思う。
年末が近づき、店の予定も慌ただしくなる中、湯浅からクリスマスの夜にライブへ出ることになったという連絡が届く。
続けて送られてきた「来てほしい」という言葉に、理沙はしばらく迷った末、短く「行く」と返信する。
曲はもう止めることも戻すこともできず、そのまま前へ進んでいた。
|