001_26_クリスマスの夜のサプライズ(1)

そのあとも、やり取りは続いた。

深夜に、短い通知が届く。
画面を開くと、動画や画像がいくつか並んでいる。

自宅で歌っている様子。
壁に寄りかかりながら、同じフレーズを繰り返している。
声を止めて、何かを考えている。

別の日には、スタジオの中だった。

メンバーと音を合わせている。
ギターの音が増え、ドラムが入る。
曲の輪郭が、少しずつ太くなる。

理沙は、それを音を出さずに眺めることが多かった。

指先で画面をなぞりながら、一つずつ確認する。
再生はしない。
ただ、動きだけを見る。

「西日が差している」は、形を変えていく。

最初に渡した紙の上の言葉とは、少し違うものになっていた。

間が変わる。
音の重なりが増える。
息を置く場所が、ずれる。

それでも、崩れてはいない。芯は残っている。
理沙は、それを外から見ていた。
手を入れようとは思わなかった。

必要なことは、もう済んでいる。あとは、向こうで整えられていく。
その流れに、触れないままでいた。

年末が近づく。
店の中の空気も、少しだけ慌ただしくなる。

予定が詰まり、時間の区切りが曖昧になる。
その合間に、メッセージが届く。

「クリスマス、出ることになった」

短い文だった。

続けて、場所と時間が送られてくる。
ライブハウスの名前。出演の順番。
夜の時間帯だった。

理沙は、画面を見たまま少しだけ止まる。

頭の中で、店のシフトをなぞる。
その日は、忙しくなる。外に出る余裕があるかは、分からない。
しばらくして、もう一通届く。

「来てほしい」

さっきより、少しだけ強い言葉だった。
理沙は、返信を打たないまま、画面を閉じた。

しばらくして、もう一度開く。同じ文面を、もう一度見る。
特別なことは書かれていない。
それでも、目に残る。

理沙は、短く打った。

「行く」

送信する。
それで終わる。

グラスに手を伸ばす。中身は少しだけ残っている。
それを、ゆっくりと飲む。
曲は、もう自分の手を離れている。
止めることも、戻すこともできない。
そのまま、進んでいく。

理沙は、それを少し離れたところから見ていた。

追いかけるわけでもなく、置いていくわけでもなく。
ただ、そのまま。



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