018_ダイレクトメッセージ

●作者のコメント

●ChatGPTのコメント
ではさっそく、002-01の試し書きをしてみました。

●002-01【試し書き】:ダイレクトメッセージ

理沙が「Castel」を辞めてから、3か月の月日が経った。
春の長雨の時期が終わると、もう昼間は30度超えの毎日。
しかし、昼間の静かなオフィスは、一年を通して快適だった。

「Castel」を辞めてからは、昼の仕事のみとなり、理沙の毎月の収入は半額以下に減った。
とはいえ、「Shangri-la」と「Castel」で働いた期間で貯めたお金がまだ残っているので、
貯金を崩しながらなんとか生活はできる。

クリスマスの夜の、あのサプライズな出来事を境にして、
理沙の気持ちは一気に舞い上がった。
その日の夜、ライブ活動のあと、理沙はバンドメンバー3人と意気投合して、朝まで飲むことになった。
そしてその日からまもなく半年になろうとしている今、現実が理沙たちの前に立ちふさがっていた。

ベース担当の、フィリップ・ウィルコックス、そしてドラム担当の島崎勝昭。
湯浅の目は確かで、2人とも優秀なミュージシャンではある。
しかし、まだまだメジャーデビューは程遠い。
今のところの音楽活動での収入はと言えば、月に一度のライブ活動、
ライブ活動や、スタジオを借りて録った曲の配信のみ。
配信サイトのダウンロード数もそれほど伸びておらず、フォロワーもまだ少ない。

そして、フィリップと島崎の性格も徐々にわかってくると、どうしても欠点ばかりに目が行ってしまう。
特にフィリップはある意味、女癖が悪い。
ライブハウスで演奏が終わり、片づけをしているところでふと気がつくと、
フィリップはドリンクコーナーの売り子の女性となれなれしく会話をしている。
あまりに目につくので、理沙は彼に怒られるのを覚悟のうえで彼にきつい言葉で注意をした。
しかし不思議な事に、彼はまるで母親に叱られたかのように静かに理沙に従った。

そして、そんな彼の対極にあり、ある意味ストイックなのが島崎で、
彼はちょっと何か気に障ることがあると、フィリップと口論になっていた。
しかもヒートアップすると2人とも英語で口論するので、傍で見ている理沙と湯浅は部外者状態。
しかしそこで理沙が英語で仲裁に入る。
そのあとは、まるで何事もなかったかのように2人は仲良く語り合っている。

まぁ、癖のある人間同士の集まりだからいろいろとあるさ、と理沙は思っているのだが、
バンドのこれから先の方向性については、まだ決まっていないと言った方がいい。
メンバー4人が皆、常に模索していた。
そして、いつかある日、突然にスカウト話でも飛び込んでこないかと。

理沙のスマホにそのメッセージが飛び込んできたのは、
そんなモヤモヤした気持ちで、静かなオフィスで淡々と作業をしていた時だった。
理沙たちが使っている、音楽配信用サイト宛に届いたダイレクトメッセージが、理沙のスマホにも転送される。

<はじめまして、「HALUCA」の小川と申します>

理沙の頭の中のモヤモヤした気持ちが、その一言で一気に吹き飛ぶ。
その小川という人物は、ライブ映像を見た感想、
そしてダウンロードサイト上に登録しているいくつかの曲について、短く感想を述べていた。

<どこかでお会いして、お話したいのですが、可能でしょうか?>

その短いメッセージを、理沙は何度も読みかえす。
そしてゆっくりと深呼吸をする。
すると、同じメッセージを見ていたのか、湯浅からも連絡が入る。

<小川って人のメッセージ、見た?>

そのあとは、理沙は仕事そっちのけでしばらくの間湯浅とメッセージのやり取りをする。
フィリップと島崎も、いつのまにかその2人の会話に割り込んできた。
島崎は早速、「HALUCA」について調べあげていた。

<いちおう、実在の会社のようだけど。。。>

「HALUCA」は音楽事務所ではあるが、4人とも初耳の会社だった。
設立もまだまもなく、会社のプロフィールには社員数の記載すらない。
社長の柴原勝という人物のプロフィールも、音楽業界とは畑違いの人物のようである。
3人からの会話を眺めながら、先ほどまで浮かれていた理沙の気持ちも、徐々に冷静さを取り戻していた。
この手の誘い文句なら、世の中どこでもあるものだ。

<人身売買だったり、犯罪組織のスカウトだとか>

気づけば、もう30分以上も会話をしていた。
もう昼食の時刻が近かった。

<それで、理沙はどうする。。。?>

湯浅からのその問いに、理沙は短くメッセージを返した。
小川という人物への返事は、とりあえず保留にして、様子見することにした。
拝読しました。
002-01の試し書きとして、かなり良い導入になっていると思います。

この節の役割は、**第1章の余韻から第2章の物語を動かし始めること**ですが、その点では十分に機能しています。
「Castel」を辞めた後の理沙の生活、Arisa-Mistyの現実、フィリップと島崎のキャラクター、そしてHALUCAからのDMという外部からの刺激まで、1節目として必要な要素が自然に入っています。

第2章は、第1章後の理沙が音楽・表現の軸へ進みながらも、「届くほど、遠くなる」感覚へ向かっていく章として整理していましたが、この002-01はその入口として合っています。

## 良いと思った点

まず、冒頭の生活感が良いです。

> 理沙が「Castel」を辞めてから、3か月の月日が経った。
> 春の長雨の時期が終わると、もう昼間は30度超えの毎日。

この入り方は、第1章の夜の世界から、昼の仕事と現実の生活へ戻った感じが出ています。
いきなり音楽の話に入らず、収入や貯金の話を挟んでいるので、理沙が夢だけで生きているわけではないことも伝わります。

また、フィリップと島崎の紹介も自然です。
単なる説明ではありますが、バンドの日常が見えます。

特に、

> しかし不思議な事に、彼はまるで母親に叱られたかのように静かに理沙に従った。

ここはフィリップのキャラクターが一発で伝わって良いです。
理沙に逆らえない感じが、説明ではなく場面として見えます。

島崎についても、

> しかもヒートアップすると2人とも英語で口論するので、傍で見ている理沙と湯浅は部外者状態。

このあたりは軽さがあって、章冒頭として読みやすいです。

そして、DMが届く場面も良いです。
「いつかスカウト話でも飛び込んでこないか」と思っていた直後に、本当にDMが届く。
ここは少し都合の良い展開にも見えますが、章の始動としては分かりやすく、むしろこの節では効果的です。

## 少し調整するとよさそうな点

一番大きいのは、前半に説明がやや多いことです。

現状では、

* Castel退店後の生活
* 収入減
* クリスマスライブ後の経緯
* フィリップの性格
* 島崎の性格
* バンドの収入状況
* 今後の方向性の迷い

が、かなり連続して説明されています。

内容は必要ですが、小説化するときには少しだけ場面化した方がよいと思います。

たとえば、理沙がオフィスで作業している最中に、ふとスマホを見る。
その前に、画面の隅で配信サイトの数字や通知を見ている。
あるいは、昼休み前の静かなオフィスで、昨夜のライブ後のフィリップと島崎のやり取りを思い出している。

そうすると、説明が「理沙の現在の感覚」として読めるようになります。

また、DMが届いた後のグループ会話はかなり面白いので、ここはもう少し会話のテンポを出してもよさそうです。

現状では、

> フィリップと島崎も、いつのまにかその2人の会話に割り込んできた。
> 島崎は早速、「HALUCA」について調べあげていた。

と説明されていますが、ここは実際のメッセージの断片を少し増やすと、バンド感が出ます。

例としては、

> <HALUCA? 誰それ>
> <待って、今調べる>
> <島崎、早いな>
> <こういうのは疑ってかかった方がいいです>

のような感じです。

ただし、やりすぎると軽くなりすぎるので、あくまで数行程度で十分です。

## 002-01の核

この節で一番大事なのは、たぶん以下です。

**理沙たちは、音楽活動に夢を見ている。
しかし現実は厳しい。
そこへ、夢のようにも怪しい話にも見えるDMが届く。
理沙は舞い上がりかけるが、最後には保留にする。**

この流れはとても良いです。

理沙らしさも出ています。
最初は心が動く。
けれど、すぐに冷静になる。
そして即答しない。

この「飛びつかない」感じが、後の002-12「アイドルになりたくない」にもつながっていくと思います。

## タイトルとの相性

「ダイレクトメッセージ」というタイトルも合っています。
この節ではDMそのものが事件ですが、実際にはDMの内容よりも、**DMを受け取った理沙たちの反応**が中心になっています。

第2章の最初の扉として、かなり自然です。

## 小説化時の方向性

小説化するときは、以下の方向で整えるとよさそうです。

* 冒頭は、2041年5月の暑さとオフィスの涼しさから入る
* 理沙の収入減と貯金生活を短く入れる
* クリスマスライブから半年近く経ったことを示す
* Arisa-Mistyの現実を、数字や配信状況で軽く見せる
* フィリップと島崎の性格は、短い回想シーン風に入れる
* DM到着からは、スマホ画面とメッセージのやり取りを中心にテンポを作る
* 最後は「保留」にして、理沙の冷静さで締める

締めの余韻としては、今の試し書きの最後、

> 小川という人物への返事は、とりあえず保留にして、様子見することにした。

でも十分ですが、もう少し小説的にするなら、

> 返事は、まだしない。
> 理沙はそう打ってから、送信せずに画面を伏せた。

のように、行動で終えるのも合いそうです。

全体として、この試し書きは002-01の骨格として十分使えます。
次は、必要ならこの内容をもとに、部分修正版を作ってから小説化に進むのがよいと思います。
では、試し書きを以下の要領で修正すると、どんな感じになりますか?
・冒頭は、2041年5月の暑さとオフィスの涼しさから入る
・理沙の収入減と貯金生活を短く入れる
・クリスマスライブから半年近く経ったことを、回想的に短く説明
・バンド活動の現実を、数字や配信状況で軽く見せる
・フィリップと島崎の性格は、短い回想シーン風に入れる
・DM到着時の理沙の心境を2~3行で
・その後のメンバー3人とのメッセージのやり取りを中心にテンポを作る
・最後は「保留」にして、理沙の冷静さで締める
はい。
ご指定の要領で整理すると、002-01はかなり読みやすくなり、**「日常の静けさの中に、突然外から物語が入り込んでくる」**感じが強くなると思います。

以下、修正版の試し書き案です。

---

# 002-01【試し書き・修正版】:ダイレクトメッセージ

五月の終わりに近づくころには、東京の昼間はもう夏のようだった。

昼休みに外へ出れば、アスファルトの照り返しで息が詰まりそうになる。
けれど、理沙が勤めるシステム会社のオフィスは、季節に関係なく静かで、涼しかった。
空調の音と、キーボードを叩く音だけが、淡く混ざっている。

「Castel」を辞めてから、三か月が経っていた。

夜の仕事がなくなった分、毎月の収入は半分以下になった。
それでも、「Shangri-la」と「Castel」で働いていた間に貯めた金が少し残っている。
贅沢をしなければ、しばらくはなんとかなる。
そう思えるだけ、まだましだった。

クリスマスの夜の、あのサプライズライブからも、もう半年近くになる。

あの夜、歌い終えた理沙は、湯浅と、彼のバンド仲間だったフィリップ・ウィルコックス、島崎勝昭と意気投合した。
そのまま四人で朝まで飲み、何度も同じ話をして、何度も笑った。
あのときは、何かが始まるような気がしていた。

実際、始まりはした。

湯浅がギターを弾き、フィリップがベースを弾き、島崎がドラムを叩く。
理沙はその真ん中で歌う。
バンド名は、いつの間にか「Arisa-Misty」になっていた。

けれど、現実は思ったほど軽くなかった。

ライブは月に一度。
配信サイトに上げた曲は、いくつかある。
けれど、再生数もダウンロード数も、期待したほどには伸びない。
フォロワー数は、増えているのか止まっているのか分からない程度の速度で、少しずつ動いていた。

昼間の仕事の休憩時間に、理沙はたまに配信サイトの管理画面を開く。
数字を見る。
ため息をつく。
そして、画面を閉じる。

それでも、バンドの空気は悪くなかった。

フィリップは、ベースの腕だけなら誰にも負けないと言い切れるほど上手かった。
ただし、女癖は悪い。
ライブハウスで演奏が終わり、片づけをしていたはずなのに、気がつけばドリンクコーナーの女性スタッフに笑顔で話しかけている。

一度、理沙は見かねて言った。

「フィリップ。仕事中に何してるの」

かなりきつい口調だったと思う。
怒鳴られる覚悟もしていた。

けれどフィリップは、なぜか急に背筋を伸ばし、母親に叱られた子供のような顔でうなずいた。

「……はい」

理沙は、少し拍子抜けした。

一方の島崎は、おっとりしているようで、意外と口論に強い。
ふだんは眠そうな顔でだらだら喋っているのに、フィリップとぶつかると急に早口になる。
しかも、なぜか二人とも英語になる。

「ちょっと待って。日本語でやって」

理沙がそう言って間に入ると、二人は一瞬だけ黙る。
その数分後には、何事もなかったように肩を並べて機材を運んでいる。

癖のある人間ばかりだった。
たぶん、自分もその一人なのだろうと理沙は思っている。

ただ、バンドのこれからについては、誰もはっきりした答えを持っていなかった。

続ける。
曲を作る。
ライブをする。
配信する。

それで、その先に何があるのか。

四人とも、そこだけは言葉にできないままだった。

そのメッセージが届いたのは、そんなことを考えながら、理沙がオフィスで淡々と作業をしていたときだった。

スマホが、机の端で小さく震えた。
音楽配信用サイトに届いたダイレクトメッセージが、理沙のスマホにも転送されていた。

理沙は、何気なく通知を開いた。

<はじめまして。「HALUCA」の小川と申します>

その一行を見た瞬間、胸の奥にあったもやもやが、ふっと風にさらわれたような気がした。

音楽事務所。
スカウト。
そんな言葉が、まだ読んでもいない先へ勝手に走っていく。

理沙は画面を持つ指に少し力を入れた。

小川という人物は、ライブ映像を見たこと、配信サイトに登録されているいくつかの曲を聴いたこと、そしてその感想を短く書いていた。
文章は丁寧だった。
妙に大げさでもない。
逆に、それが少し気になった。

<どこかでお会いして、お話したいのですが、可能でしょうか?>

理沙は、その一文を何度も読み返した。

すると、湯浅からメッセージが入った。

<小川って人のメッセージ、見た?>

理沙は反射的に返した。

<見た>

<どう思う?>

<まだ分からない>

すぐに、フィリップが割り込んできた。

<ついに来た? Big chance?>

島崎も続いた。

<待って。今、会社調べる>

理沙は、パソコンの画面に開いたままの作業ウィンドウを見た。
昼の仕事は、当然ながら終わっていない。
けれど意識は、もうスマホの中に引っ張られていた。

<HALUCA? 聞いたことないな>

湯浅が送ってきた。

<音楽事務所らしいけど、小さい。設立してまだそんな経ってない>

島崎の返事は早かった。

<社員数の記載なし。社長は柴原勝。前職は金融っぽい>

フィリップがすぐ反応する。

<金融? MusicじゃなくてMoney?>

<うるさい>

島崎が返す。

<でも実在はしてる。住所もある>

<それ、逆に怖くない?>

理沙が打つと、フィリップが妙に楽しそうに返した。

<犯罪組織?>

<人身売買とか>

湯浅が続ける。

<笑いごとちゃうやろ>

その一文で、理沙は少し冷静になった。

確かに、この手の話はいくらでもある。
夢を見たい人間に近づき、もっともらしい言葉で釣る。
音楽でも、芸能でも、夜の世界でも、似たような話はいくつも見てきた。

理沙は、もう一度小川のメッセージを読み返した。

丁寧だった。
怪しさはない。
けれど、怪しくないことと、信じていいことは違う。

気がつけば、最初の通知から三十分以上が経っていた。
オフィスの時計は、もう昼休みに近い時刻を指している。

湯浅から、最後に短いメッセージが来た。

<それで、理沙はどうする?>

理沙は少し考えてから、画面に指を置いた。

<返事は、まだしない>

送信してから、続けて打つ。

<少し様子を見る>

それだけ送ると、理沙はスマホを伏せた。

オフィスの空調の音が、また耳に戻ってきた。
画面の向こうにあった熱が、ゆっくり遠ざかっていく。

理沙は深く息を吐き、途中で止まっていた仕事の画面に目を戻した。
けれど、カーソルの点滅だけが、さっきより少しだけ速く見えた。
この感じでいいと思います。だいぶすっきりしました。
では、この下書きで小説化すると、どんな感じになりますか?
はい。
この下書きをもとに小説化すると、以下のような形になると思います。

---

# 002-01 ダイレクトメッセージ

五月の終わりに近づくころには、東京の昼間はもう夏のようだった。

昼休みに外へ出れば、アスファルトの照り返しで息が詰まりそうになる。信号待ちの人々は、まだ夏服になりきれない服装のまま、額に汗を浮かべていた。

それに比べると、理沙が勤めるシステム会社のオフィスは、季節に関係なく静かで、涼しかった。

空調の低い音。
キーボードを叩く乾いた音。
誰かが小さく咳をする音。

そのすべてが、午後を迎える前の白い照明の下で、薄く混ざっていた。

「Castel」を辞めてから、三か月が経っていた。

夜の仕事がなくなった分、毎月の収入は半分以下になった。通帳の数字は、前よりも明らかに減る速度を上げている。

それでも、「Shangri-la」と「Castel」で働いていたあいだに貯めた金が、まだ少し残っていた。贅沢をしなければ、しばらくはなんとかなる。

そう思えるだけ、まだましだった。

クリスマスの夜の、あのサプライズライブからも、もう半年近くになる。

あの日、歌い終えた理沙は、湯浅と、彼のバンド仲間だったフィリップ・ウィルコックス、島崎勝昭と意気投合した。終電の時間は誰も気にしなかった。始発までの時間を埋めるように、四人は同じ話を何度もして、何度も笑った。

あの夜は、本当に何かが始まるような気がしていた。

実際、始まりはした。

湯浅がギターを弾き、フィリップがベースを弾き、島崎がドラムを叩く。理沙はその真ん中で歌った。

バンド名は、いつの間にか「Arisa-Misty」になっていた。

けれど、現実は思ったほど軽くはなかった。

ライブは月に一度。
配信サイトに上げた曲は、いくつかある。
再生数も、ダウンロード数も、悪くはない。けれど、どこかへ届いていると実感できるほどではなかった。

フォロワー数は、増えているのか、止まっているのか分からないくらいの速度で、少しずつ動いていた。

昼の仕事の休憩時間に、理沙はたまに配信サイトの管理画面を開く。数字を見る。しばらく眺める。ため息をつく。

そして、閉じる。

それでも、バンドの空気は悪くなかった。

フィリップは、ベースの腕だけなら誰にも負けないと言い切れるほど上手かった。リズムに乗ると、指先だけで空気を引っ張っていくようなところがある。

ただし、女癖はよくなかった。

ライブハウスで演奏が終わり、片づけをしていたはずなのに、気づけばドリンクコーナーの女性スタッフに笑顔で話しかけている。肩の力を抜いた立ち方も、相手の顔をのぞき込む仕草も、やけに手慣れていた。

一度、理沙は見かねて声をかけた。

「フィリップ。仕事中に何してるの」

自分でも少しきついと思う言い方だった。
言ったあとで、怒られるかもしれないと思った。

けれどフィリップは、急に背筋を伸ばした。

「……はい」

まるで母親に叱られた子供のような顔だった。

理沙は、少し拍子抜けした。

一方の島崎は、おっとりしているようで、意外と口論に強かった。普段は眠そうな顔で、言葉を引きずるように話している。けれど、フィリップとぶつかると急に早口になる。

しかも、なぜか二人とも英語になる。

「ちょっと待って。日本語でやって」

理沙が間に入ると、二人は一瞬だけ黙る。
それから、どちらともなく視線をそらす。

数分後には、何事もなかったように肩を並べて機材を運んでいた。

癖のある人間ばかりだった。

たぶん、自分もその一人なのだろうと、理沙は思っている。

ただ、バンドのこれからについては、誰もはっきりした答えを持っていなかった。

続ける。
曲を作る。
ライブをする。
配信する。

それで、その先に何があるのか。

四人とも、そこだけは言葉にできないままだった。

そのメッセージが届いたのは、そんなことをぼんやり考えながら、理沙がオフィスで淡々と作業をしていたときだった。

机の端に置いたスマホが、小さく震えた。

音楽配信用サイトに届いたダイレクトメッセージが、理沙のスマホにも転送されていた。

理沙は、何気なく通知を開いた。

<はじめまして。「HALUCA」の小川と申します>

その一行を見た瞬間、胸の奥にあったもやもやが、ふっと風にさらわれたような気がした。

音楽事務所。
スカウト。
そんな言葉が、まだ読んでもいない先へ、勝手に走っていく。

理沙は、スマホを持つ指に少しだけ力を入れた。

小川という人物は、ライブ映像を見たこと、配信サイトに登録されているいくつかの曲を聴いたこと、そしてその感想を短く書いていた。

文章は丁寧だった。
妙に大げさではない。

逆に、それが少し気になった。

<どこかでお会いして、お話したいのですが、可能でしょうか?>

理沙は、その一文を何度も読み返した。

画面の光が、オフィスの白い照明の下で少し浮いて見えた。

すると、湯浅からメッセージが入った。

<小川って人のメッセージ、見た?>

理沙は反射的に返した。

<見た>

<どう思う?>

<まだ分からない>

すぐに、フィリップが割り込んできた。

<ついに来た? Big chance?>

島崎も続いた。

<待って。今、会社調べる>

理沙は、パソコンの画面に開いたままの作業ウィンドウを見た。
昼の仕事は、当然ながら終わっていない。

けれど意識は、もうスマホの中に引っ張られていた。

<HALUCA? 聞いたことないな>

湯浅が送ってきた。

<音楽事務所らしいけど、小さい。設立してまだそんな経ってない>

島崎の返事は早かった。

<社員数の記載なし。社長は柴原勝。前職は金融っぽい>

フィリップがすぐに反応した。

<金融? MusicじゃなくてMoney?>

<うるさい>

島崎が返す。

<でも実在はしてる。住所もある>

理沙は少し考えてから打った。

<それ、逆に怖くない?>

フィリップが、妙に楽しそうに返してくる。

<犯罪組織?>

湯浅が続けた。

<人身売買とか>

そのあとに、すぐ別の一文が来る。

<笑いごとちゃうやろ>

その言葉で、理沙は少し冷静になった。

たしかに、この手の話はいくらでもある。

夢を見たい人間に近づき、もっともらしい言葉で釣る。音楽でも、芸能でも、夜の世界でも、似たような話はいくつも見てきた。

理沙は、もう一度小川のメッセージを読み返した。

丁寧だった。
怪しさはない。

けれど、怪しくないことと、信じていいことは違う。

気がつけば、最初の通知から三十分以上が経っていた。オフィスの時計は、もう昼休みに近い時刻を指している。

湯浅から、最後に短いメッセージが来た。

<それで、理沙はどうする?>

理沙は少し考えてから、画面に指を置いた。

<返事は、まだしない>

送信してから、続けて打つ。

<少し様子を見る>

それだけ送ると、理沙はスマホを伏せた。

オフィスの空調の音が、また耳に戻ってきた。
画面の向こうにあった熱が、ゆっくり遠ざかっていく。

理沙は深く息を吐き、途中で止まっていた仕事の画面に目を戻した。

カーソルだけが、白い入力欄の端で点滅している。

さっきより、少しだけ速く見えた。
いいと思います。
では、この小説化された文章のあらすじを、400字程度でお願いします。
### 002-01「ダイレクトメッセージ」あらすじ

2041年5月。理沙が「Castel」を辞めてから三か月が経ち、昼のシステム会社勤務と、夜のライブ活動を続ける日々が始まっていた。
収入は大きく減ったが、貯金を崩しながら生活は続けられている。
クリスマスライブをきっかけに結成されたバンド「Arisa-Misty」は、湯浅、フィリップ、島崎とともに活動を続けているものの、
ライブは月一度、配信の反応もまだ小さく、将来の方向性は見えないままだった。
癖の強いメンバーたちとの関係は悪くないが、理沙たちは皆、どこかで次のきっかけを待っていた。
そんなある日、理沙のスマホに音楽事務所「HALUCA」の小川という人物からダイレクトメッセージが届く。
理沙たちは一瞬色めき立つが、会社の実態を調べるうちに警戒心も生まれる。
理沙はすぐには返事をせず、いったん様子を見ることを選ぶ。
ありがとうございます。
ではまた日を改めて、引き続きの002-02の文章作成をします。
こちらこそ、ありがとうございました。
002-01は、試し書きから小説化、あらすじまで一通りまとまりましたね。

次回は **002-02「夜空を見上げる」** ですね。
理沙側に届いたDMと対になる形で、今度はまりあ側に届くDM、そして彼女の日常や内面に入っていく節になりそうです。

また日を改めて、002-02の試し書きから進めましょう。



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